USC Step CUP U-9 にて新たな学び
8月15日、Uスポーツクラブさん主催のU-9サッカー大会「USC Step CUP」に参加してきました。
今回の大会では、好奇心から「ノーコーチング」にチャレンジしてみました。
初の試みノーコーチング。
名前の通り、試合中にコーチから選手たちへ何も声掛けをしないという試みです。
「もっと広がろう」
「そこ危ないよ!」
「切り替えよう!」
「ナイスプレー!」
こうした声掛けを一切せず、子どもたち自身が考え、自分たちで声を掛け合いながら試合をする。
今回、あえてそんな一日を作ってみました。
■ 子どもたちには「ノーコーチング」を伝えずにスタート
今回、子どもたちには事前に「今日はコーチングをしないよ」とは伝えませんでした。
いつも通りウォーミングアップを行い、試合前にはコーチがポジションを決めます。
そして試合開始。
そこからは、何が起きても何も言わない。
良いプレーが出ても、ミスをしても、失点しても、チームの雰囲気が悪くなっても、コーチは見守るだけ。
実際にやってみると、これが想像以上に難しいものでした。
■ 一番我慢が必要だったのは「褒めないこと」
ノーコーチングをやってみて、コーチとして一番ストレスを感じたのは、意外にも「アドバイスができないこと」ではありませんでした。
一番難しかったのは、「良いプレーを褒められないこと」でした。
素晴らしいパスが出た。
シュートが決まった。
身体を張って良いディフェンスをした。
そんなとき、いつもならすぐに名前を呼んで、「ナイスプレー!」と伝えます。
選手も嬉しそうな表情をしますし、それによってチーム全体の雰囲気が良くなることもあります。
でも、この日はそれすら封印しました。
なぜなら、「コーチに褒められたから、これは良いプレーなんだ」という基準ではなく、
「今のプレーは良かった」
「今の判断はうまくいかなかった」
ということを、子どもたち自身の基準で感じてほしかったからです。
もちろん、褒めることが悪いわけではありません。
ただ今回は、コーチからの評価を一度なくしてみることで、子どもたち自身が何を感じ、どう行動するのかを見てみたいと思いました。
■ いきなり訪れた、苦しい時間
この日、特に難しい試合となったのが、主催のUスポーツクラブさんとの初戦でした。
この日最初の試合で強豪チームとの対戦。スコアにも差がつき、苦しい展開となりました。
失点するたびに落ち込んでいく選手たち。
チーム全体にも少しずつ重たい空気が流れ始めます。
いつもなら、
「まず1点取り返そう!」
「もう少し下がってみよう!」
「ここが危ないよ!」
「まだまだいけるぞ!」
そんな言葉を掛けながら、プレーを修正したり、暗くなった雰囲気を変えたりします。
でも、この日は何も言いません。ただ、見守りました。
正直、このまま何も変わらず試合が終わってしまうのではないかとも思いました。
それでも我慢して、待ちました。
すると、少しずつ変化が起き始めます。
一度はどん底まで落ちたように見えた子どもたちが、自分たちから少しずつ声を掛け合うようになったのです。
誰かに言われたからではありません。
コーチが雰囲気を変えたわけでもありません。
自分たちで「このままじゃダメだ」と感じたのかもしれません。
子どもたち自身の力で、少しずつチームの空気を変えていきました。
■ コーチが黙ると、子どもたちの声が増えていった
2試合目、3試合目も同じです。
「今日はコーチは何も言わないからね」
そんな説明も一切しません。
ポジションだけを伝え、試合が始まったら子どもたちに任せました。
すると、さらに面白い変化が起こりました。
試合を重ねるごとに、子どもたち同士の声がどんどん増えていったのです。
ピッチの中では選手同士が声を掛け合う。
ベンチにいる選手まで、仲間に声を掛ける。
誰かがチームを盛り上げ、それに別の選手が反応する。
気がつけば子どもたち自身の声でチームが動いていました。
そして最終的には、ベンチからチャント(応援歌)まで聞こえてくるようになり、チームのテンションは最高潮。
そこにあるのは、純粋にサッカーを楽しむ子どもたち自身が作り出している試合の空気でした。
何より、みんなとても楽しそうでした。
■ 「今日、いつもと違うことなかった?」
3試合目が終わったあと、子どもたちに聞いてみました。
「今日、いつもと違うことなかった?」
すると、誰一人として、「コーチが何も喋ってない!」とは言いませんでした(笑)
そこでこちらから、「今日コーチ、試合中みんなに一言も声を掛けてないんだよ」と伝えると、
「あ~~!たしかに!!」
と、そこで初めて気づいた様子。
コーチとしては「こんなに我慢して何も言わなかったのに!」という気持ちもありましたが(笑)、逆にそれだけ子どもたちはコーチの声がなくても、自分たちの世界で試合に夢中になっていたのだと思います。
そこで、「コーチがずっと喋っているよりも、みんなが自分たちで気づいて、声を掛け合って戦えるほうが楽しいよね」という話をしました。
その後の試合も、基本的には子どもたちに任せました。
コーチは一歩引いた場所から、奮闘する子どもたちを見守りました。
■ 「教えない」のではなく、「教えたことを自分で使う時間」
CDYでは、普段のトレーニングでたくさんのことを子どもたちに伝えています。
サッカーの中で起きている様々な現象を言語化し、「何を見て」「どう判断するのか」という基準を伝えることで、最終的に子どもたち自身が問題を解決できるようになることを目指しています。
そのため、日々のトレーニングではコーチが言葉を使って指導する場面も多くあります。
だからこそ、今回の経験を通して改めて感じたことがあります。
トレーニングでは、大切なことをしっかり伝える。
上手にプレーするためのコツや、判断するための基準を学ぶ。
試合では、目の前で起きた問題の答えをすぐにコーチが教えるのではなく、これまで学んできたことを子どもたち自身が自由に使ってみる。
失敗してもいい。
うまくいかなくてもいい。
自分で考え、仲間と話し、自分たちなりの答えを探してみる。
試合は、そうした「挑戦の場」であってもいいのだと思います。
そして何より、試合の主役は子どもたちです。
自分たちで考え、自分たちで声を掛け合い、自分たちで試合を楽しむこと。
そんな時間を、これからも大切にしていきたいと思います。
■ 「待つ」ことも指導のひとつ
今回ノーコーチングに挑戦して、一番大きな発見だったのは、放っておいても子どもたちは成長に繋がるきっかけを思った以上に作ることが出来るということ。
最初は、当然うまくいかないこともあります。
コーチがアドバイスをすれば、すぐに改善できることもあります。
悪い流れを見ていると、つい助けたくなります。
でも、そこで答えを渡さず、子どもたちを信じて待ってみる。
すると、自分たちで考え始める。
自分たちで声を掛け始める。
自分たちでチームを良くしようとし始める。
今回、その変化が生まれる瞬間を実際に見ることができました。
「何も言わない=何も指導していない」ではありません。
子どもたちが自分で答えを見つけるまで、あえて待つ。
それもまた、指導者に必要な力なのだと感じました。
■ 子どもたちと一緒に、指導者も成長していく
指導歴も20年以上となり、これまで様々なカテゴリーで、多くの子どもたちと試合を経験してきましたが、一日を通して試合中に何もコーチングをしないという経験は今回が初めてでした。
「見守る指導」について改めて考える大きなきっかけとなり、新たな学びがあったこと良かったと思っています。
子どもたちは、日々新しいことに挑戦しています。
うまくいったり、失敗したり、そこから気づいたりしながら成長していきます。
「これが正解」と決めつけるのではなく、新しいことにチャレンジする。
我々指導者も同じように成長していくことが大切だと思います。
「教えること」だけでなく、「任せること」「待つこと」「見守ること」も大切にしながら、これからも子どもたちと一緒に成長していきたいと思います。
今回、このような学びの機会をいただいたUスポーツクラブの皆様、対戦していただいたチームの皆様、どうもありがとうございました。

